もはや恋月姫先生を崇拝している域の私は、
とにかく先生に人形創作を教えて頂ける事に感激していました。
しかも、ビスクドールを創るのは初めてで、
まずは作り方を学ぼうという意識レベルでしたので、
自分の作品と向き合って考えを掘り下げる気なんて皆無。
当然、自分の「作風」について思いめぐらす事もありませんでした。
唯一、恩師や母や妹が、人形が完成したら是非欲しいと言ってくれていた為、
彼女たちの好みや要望を作品に取り入れたいという気持ちはありました。
ところが、それでは困るのが「イメージ画」を描く工程です。
周囲の生徒さんたちが、サラサラと可愛らしいお人形の絵を描き進める中、
私は全く筆が進まず、絵も描けず、すっかり困り果ててしまいました。
結局、考えがまとまらないまま、イメージ画は適当に描いてしまったのですが…。
恋月姫先生は、
「お人形って、こういう風にした方が可愛いと思うの」
と示して下さりつつも、
「あら。これはこれで面白いわね。こういう表現も、あって良いんじゃない?」
「お人形は人間と違っても良いのよ。こうだったら良いな、という理想だったり、
想像の部分もあるのがお人形だから、
人間と同じじゃないから間違いとは言えないでしょう」
と仰って下さいます。
いつもアドバイスは下さいますが、
「これはおかしい」「これは変」
と頭ごなしに否定なさる事がないので、
個人的にはとても安心して学べます。
そんな恋月姫先生が、ある日こうお訊ねになったのです。
「どんなお人形を作りたいの?」
これは、特別な質問ではなく、
人形を作る上で、いたって普通の問いかけなのかもしれません。
でも、私は即答できなかったのです。
私は、どんなお人形を作りたいと思っているのかしら…?
とりあえず、作り方が分かるようになれば良いと思って居たけれど…。
とにかく夢中で原型作りに取り組んでいた私は、
第二原型が7割方出来上がった頃から、
急に自問自答を始めたのでした。
※具体的には、作り始めて10ヶ月経ったくらいからです。