恋月姫先生のファンであれば、
「恋月姫のビスクドールはとても薄く作られていて、抱くとその軽さに驚く」
という噂を聞いた事があると思います。
光が透けるほどの薄い磁器は、
美しくも繊細で儚く、
ビスクドールに憧れる者としては、
ロマンを感じます。
ところが、作り手の立場になってみますと、
「ビスクドールを極薄で作る」のは大変な難題で、
ロマンを感じる余裕など、
あったものではございません
しかも、苦心惨憺の末にどれほど極薄で作れたとしても、
磨きや絵付けで、
簡単に極薄のポテンシャルは損なわれます
私の場合、極薄だとどう違うのか?を知りたくて、
自分なりにあれこれと試行錯誤してみました。
とりあえず、鋳込み時の排泥のタイミングを誤ると、
絶対に極薄にはならない事が分かったのですが、
それは型の状態やスリップ・室温・湿度によっても異なり、
さらに、薄いと、
・脱型時に崩れる
・素焼き前の処理中に崩れる
・素焼き後の水磨き中に割れる
・厚みがあれば、水磨きで出てきた気泡を磨き消せても、
極薄だと気泡=穴になる(!)
・本焼成まで漕ぎつけても、不注意で簡単に割れる
↓
ハイ、作り直し!
になるのです。。。
※ちなみに、均一に薄くないとダメで、
一部分だけ薄いと、そこがキズのように浮かび上がって見えてしまいました。
↓このヘッドは、当時試作した中で1番薄く鋳込んで本焼成まで進められた物ですが、
のちに、絵付けで失敗して再起不能になりました
↓さらに練習して極薄を目指しましたが、
本当に極薄の良さを活かせるのは、
確かな技術力を持った方だけだとよく分かりました。
単に薄く作れるだけではムダ
他の工程も完璧でなければ、お話にならないのです。。。
↓練習前(94.2g)
↓練習後(44.3g)
元々が下手過ぎて、厚みはだいぶん削減できるようになりましたが、
私の技術では、極薄パーツに
恋月姫先生のように綺麗な円(ほぼ正円・・・)の穴も開けられません。
厚みがあれば、関節部分に比較的綺麗な円形の穴を開けられるのですが、
薄いと穴の形が汚くなります。
クレームブリュレの上の薄いパリパリに、
スプーンで正円の穴を開ける感覚です。
相変わらず「知りたい」という一心でやってみましたが、
検証したところで、それを作品の魅力と結び付けられるかは、
当然、全くの別問題ですね。